登記簿が見つからない?

こんにちは、西宮市の司法書士の藤原です。近畿地方はつい先日梅雨に入ったばかりですが、日本各地を見てみると、早くも梅雨明けした地域もあるようです。まだ6月であるにもかかわらず、気温が40度を超える地域もあるようです。年々夏場は暑くなっているように感じてますが、今年の夏はどうなってしまうのか本当に心配になってしまいます。

さて、以前の記事でもご紹介しましたが、現在、登記簿はコンピュータ化されており、全国どこの法務局でも、また登記情報提供サービスを利用すればパソコン・スマートフォン等からでも、全国の登記簿を取得することができるのですが、実は、管轄法務局でしか取得ができない登記簿があります。

このような登記簿には、①コンピュータ化できなかった登記簿、②そもそもコンピュータ化をしていない登記簿、の2種類があるのですが、本日は①の登記簿について紹介したいと思います。

不動産登記においては、以前は紙ベースで登記簿を管理していたのですが、昭和63年の法務省令によりコンピュータ化することが決まり、処理の整った法務局から順次コンピュータ化が進められました。ですがこのコンピュータ化をする過程で、何らかの事情によりコンピュータにデータ移行ができなかった登記簿があり、この登記簿のことを「改製不適合物件」と言います。文字通り、コンピュータへの「改製」が「不適合」であった物件のことを指します。我々司法書士業界においては、「事故簿」と言ったりしています。

では何故、登記簿のコンピュータ化ができなかったのでしょうか。例えば、物件を共有している人の共有持分の合計が1にならない場合や、存在していない所在が登記簿に記載されている場合、同じ地番の物件が複数存在している場合などなど、理由はいくつかあるようです。私自身、ある時改製不適合物件に出くわし、法務局になぜ改製できなかったのか聞いたことがありますが、その時は、「理由は分かりません」と冷たく回答されたこともあります。

改製不適合物件の特徴としては、大きく分けて次の3点が挙げられます。

  1. 登記簿が管轄法務局でしか取得できない。
  2. 現在も紙ベースの登記簿が有効である。
  3. 登記申請の方法で、オンライン申請が利用できない。

 

司法書士目線でいうと、特に3が大きいかと思います。オンライン申請とは、管轄法務局まで出向くことなく、事務所のパソコンから登記申請を行う方法ですが、この方法が採れないということは、当然ながら、管轄法務局まで登記申請に行く必要があります。不動産取引を行う場合で対象不動産が改製不適合物件であった場合は、管轄法務局が遠方の場合は登記申請に神経を使うことになります。

なお、改製不適合物件について登記申請を行った場合、コンピュータ化された登記簿の場合と異なり、登記完了証や登記識別情報通知が発行されません。そもそもこれらの適用がないためです。したがって、従前のいわゆる権利書を発行してもらうことになり、権利書の素材となる材料の提供が必要となる点に注意が必要です。

今回は少しマニアックな内容でした。ご自身が所有されている不動産の登記簿が取得出来なかった場合には、改製不適合物件の可能性も検討していただき、この記事をご参考にしていただければ幸いです。

本日はここまでです。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

司法書士 藤原亮介