役員全員の解任登記を申請した場合の対応

 こんにちは、司法書士の藤原です。新型コロナウイルスの影響が、各所に生じております。私が所属する司法書士会の各種会合やその他の会合でも、中止や延期が相次いでおります。世間では不要不急の外出は控える、可能な限り在宅勤務を行う等が盛んに言われております。未だ特効薬やワクチンの無い現時点では、個々人の対応でしか感染拡大を防ぐことはできません。それぞれが、そのとき取り得る最善の方法で、感染拡大を防止していきましょう。

 さて、本日は少しマニアックな内容ですが、商業法人登記の従前の取扱いが変更されましたので、ご案内したいと思います。

 平成15年の通知により、役員全員の解任を内容とする変更登記が申請された場合には、速やかに、登記所(法務局)から当該会社に、適宜の方法により、通知がなされる取扱いとなっておりました(平成15年5月6日民商第1405号及び平成19年8月29日民商第1753号通知)。

 これは、「役員全員の解任登記がなされた」場合、会社内部で争いがある、また不実の登記(=本当は役員全員の解任などされていないのに、何者かが会社を乗っ取るためにこのような登記を申請した)を防止する観点から、このような取扱いとなっていたものです。

 ポイントは、「会社への通知」が登記完了前であること。つまり、この通知が送られるまで、当該変更登記の処理は一旦留保されることになっていたのです。

 今回の取扱いの変更点はいくつかあるのですが、一番のキモは、この「会社への通知」が、『役員全員解任による変更登記の完了後』になされることになったことでしょう。

 なぜ登記完了までの通知が、登記完了後の通知に変わったか?

 解説によると、一律に登記完了前の通知を行っていると、実際には争いなどなく、単純に役員を全員入れ替えたい場合など、不実の登記の恐れが無い事案についても通知を行うことによる登記の処理に遅れが出てしまい、登記による迅速な公示の妨げになっていたため、ということです。

 確かに、役員全員入れ替えによる体制の一新を図る場面は少なからずあり、またこのような場合、早急に登記を完了して企業活動を円滑に進めたいとの要請もあります。したがって、個人的には妥当な変更かな、と感じているところです。

 以上、本日は商業法人登記の取扱いについてご案内させていただきました。最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

 司法書士 藤原亮介