中小企業の合併について

会社の合併というと、大きな会社の敵対的買収などをイメージする方も多いと思いますが、実は中小企業の合併手続は、そこまで複雑なものではありません。

合併に代表される組織再編の手続は、大まかに分けると、

①第三者との合併
(実質的には「売買」であり、ほとんどは法人税法上の非適格合併にあたるもの。以下、「非適格合併」とします。)
②仲間うち(親子会社、兄弟会社等)での合併
(要件を満たせば法人税法上の適格合併にあたるもの。以下、「適格合併」とします。)

以上の2つですが、中小企業の組織再編で用いられるパターンは多くが②の適格合併です。

 

第三者間の合併においては、いわゆるデューデリジェンス(投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること)が必須ですが、適格合併の当事者となる会社は、そういった手間がかからず、比較的簡単に合併手続ができるのです。

ただし、資本関係がほぼ同じであったとしても、会社には「第三者」として「債権者」が関与していることが多いため、会社法上、合併には「債権者保護手続」が必須となります。

合併のために必要となる「債権者保護手続」とは、
①官報に公告を出す
②債権者への催告(簡単に言うと「合併します」と知らせることですが、相手方が何もしなければ、一定の法律上の効果が生じます)

両方が必要となります。
(債権者への催告を省略する方法もありますが、コストがかかるためあまり用いられない方法なので割愛します。)

お金を貸している側からすれば、「勝手に借主が合併されると困る」わけで、その保護のためにこのような法律があるのです。ただし、債権者とは言っても、中小企業であれば経営者自身であったり、少額の費用の未払金のみ(合併前に支払ってしまえば済むようなもの)だったりするため、通常は借入をしている金融機関の了承を得ることができれば、②の手続はクリアとなります。

債権者保護手続については、どちらも1か月の期間(債権者が合併に異議を述べるための期間)を要するため、合併の効力発生日の1か月前までに公告や催告を行わなければなりません。

逆に言えば、債権者保護手続をクリアすれば、あとは合併契約や株主総会などの内部手続が残るだけです。また適格合併の要件を満たす場合、合併される会社の資産負債は合併する会社が帳簿価額(簿価)で引き継ぐことが認められていますので、会計処理や税務申告も非適格合併よりは簡略に行うことができ、一般的なイメージほど手間がかからずに合併手続を行うことができます。

弊所では、合併・会社分割などの組織再編の手続も承っております。お気軽にお問い合わせください。

 

司法書士 大原智香

 

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