清算結了した会社名義の担保抹消

2023年9月21日

不動産の登記簿に担保(抵当権、根抵当権等)の登記がなされていて、担保の名義人が会社名義であることがあります。その担保の抹消登記を行う際に、担保名義人である会社が現在も存在している会社なのであれば、登記手続き的には問題は無いのですが、中には既に廃業している会社である場合があります。

一般的には、一口に「廃業」ということが多いですが、実際には廃業の手続段階に応じて2種類に分かれます。

一つ目は、「解散」状態の会社。会社を廃業する場合には、まず「解散」登記を行います。これは簡単に言うと、「今から廃業手続きに入ります」と宣言する登記を意味します。解散の登記を行うと、会社は「清算中」の会社と呼ばれるようになります。

二つ目は、「清算結了」状態の会社。「清算結了」の登記がなされている会社です。こちらは、解散登記の後、清算作業を行い、廃業の処理が全て済んで、「廃業手続きが全て完了しました」と宣言する登記を意味します。そして、清算結了の登記がなされた会社は法人格が無くなり、会社の登記簿が閉鎖されることになります。

さて、本日の本題ですが、廃業している会社名義の担保の登記があった場合には、「解散」状態の会社なのか、「清算結了」状態の会社なのかで、担保抹消の登記について取り得る方法が全く異なります。

「解散」状態の会社の場合には、通常、「清算人」という役員が登記されており、清算人が会社の代表者であるため、不動産の所有者と会社の清算人とで担保抹消を行うことになります。この点は、解散していない通常の会社の場合の担保抹消と手続き的には変わりません。

一方、「清算結了」状態の会社の場合には法人格自体がありませんので、会社はもちろんのこと、会社を代表する清算人もいないため、担保抹消の登記手続き自体が行えません。しかし一切手続が行えないかと言うとそういうことはなく、この場合には、原則として、

  1. 会社の法人格を復活させる(登記簿を復活させる)
  2. 清算人を選任する
  3. 不動産の所有者と会社の清算人とで担保抹消登記を行うことになります。

しかし、担保抹消のためだけに清算結了した会社の登記簿を復活させるのはかなり手間がかかります。また会社の登記簿自体についても、担保抹消が終了したら再度清算結了の登記を行わなければなりません。

そこで、不動産登記手続においては、一定の要件を満たす場合には簡易的な措置が認められています。具体的には、会社の清算結了前の日付で不動産売買が行われていた場合には、『実体的には所有権が移っているが登記だけが出来ていない状態』であると見なして、清算結了時点の清算人と協力することにより所有権移転登記を行うことができます。そしてこの取扱は担保抹消の場合についても同様です。

但し、この方法により担保抹消する場合には、注意点が二点あります。

一点目は、あくまで清算結了前に担保抹消の理由が発生していないといけないため、清算結了後の日付を原因として抹消することは出来ません。例えば、清算結了日が令和5年1月1日であった場合に、「令和5年1月2日弁済」を原因として登記することは出来ません。

二点目は、解散、清算結了の方法によっては、会社の登記簿に清算人の登記がされていないケースがあります。例えば、休眠会社のみなし解散、みなし閉鎖の場合などです。この場合には清算人がそもそも選任されていないため、上記の方法を採用することが出来ません。この場合には、原則通りに、会社の登記簿を復活させて、清算人の選任、担保抹消という方法を取らざるをえませんが、実際の登記手続の際には管轄法務局に確認が必要となります。

司法書士藤原事務所では、清算結了した会社名義の担保抹消の取扱実績がございますので、お気軽にご相談ください。

本日は以上です。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
司法書士 藤原亮介