抵当権抹消登記を共有者の一人から申請できます

2023年3月9日

住宅ローンを完済した場合などには、抵当権の抹消登記を行う必要があります。抵当権の登記は、元となるローンを完済した場合であっても登記簿上から自動的には消えませので、ご自身で登記申請を行わなければならないのです。

この時、原則としては、不動産の名義人全員が一緒に登記を行う必要があります。例えば、不動産をご夫婦の共有名義で購入した場合には、ご夫婦が一緒に登記申請を行うことになります。しかし場合によっては、複数名の共有状態となっていて、共有者の中にすぐに連絡を取ることが難しい方がいるなど、名義人全員の協力を求めることが難しいケースがあります。

それでは、このような場合に必ず名義人全員で登記をしないといけないのかというと、実はそうではありません。民法には「保存行為」という考えた方があります。保存行為とは、ごく簡単にいうと、不動産の共有者にとってメリットになる行為は、共有者のうちの1名からでもその行為を行うことができる、というものです。この考え方は不動産登記にも当てはまり、保存行為の対象となる登記にはいくつか種類があるのですが、本日お話する抵当権抹消登記も保存行為の対象となる登記なのです。

したがいまして、抵当権抹消登記を申請する場合は、最低限共有者のうちの1名から登記を行うことが出来ます。またこの保存行為では、複数の不動産に抵当権の登記がある場合でも、各不動産に共通の名義人がいれば、その方から登記申請が可能です。例えば、甲不動産はA、B、Cの共有、乙不動産はC、D、Eの共有の場合には、甲不動産と乙不動産の共通の名義人であるCより抵当権抹消登記を行うことができます。

但し、この保存行為と似たケースで、注意が必要となる場合があります。例えば、抵当権の登記の対象が土地と建物で、土地は父親名義、建物は長男名義の場合。保存行為とは、あくまで対象不動産の全体について、共通の当事者がいるかを考えます。この例では、土地と建物はそれぞれ所有者が異なり、共通の当事者がいません。そのため保存行為を使って登記をすることは出来ません。この場合は、原則通り、土地の所有者である父親と、建物の所有者である長男とが協力して登記申請を行う必要があるのです。

このように、保存行為による抵当権抹消登記では、関係当事者が少なくすむことがあります。特に不動産を複数名で共有している場合には活用できるので、抵当権抹消登記を検討されている方は、ぜひ一度、司法書士藤原事務所までお問合せください。

本日はここまでです。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
司法書士 藤原亮介