買戻特約の抹消登記の注意点

こんにちは、西宮市の司法書士の藤原です。8月もお盆が過ぎ、夏の終わりが近づいているように感じます。今年は残暑も非常に暑くなりそうで、まだまだ暑い日が続きますが、頑張って乗り切りたいと思います。

さて、本日は「買戻特約の抹消」についてお話したいと思います。不動産の登記簿を見ていると、所有者欄(甲区)に買戻特約の登記がなされていることがあります。買戻特約は民法第579条に規定されており、簡単に言うと、「不動産の売買契約と同時に買戻特約を結ぶと、不動産の売主が買主の支払った代金と契約費用を返すことで売買の解除ができる」ものです。そしてこの買戻特約は登記事項であり、通常は不動産の新築購入の際に登記されることが多いです。また、買戻特約には期限があります。「買戻期間」といい、買戻期間が満了すると買戻特約はその効力を失いますが、この買戻期間が登記簿上満了していても、勝手に買戻特約が消されることはありません。必ず買戻特約の名義人と不動産の所有者が一緒に買戻特約の抹消登記を申請する必要があります。

事案として、住宅ローン完済にともなう抵当権抹消登記のご依頼をいただいたお客様の登記簿に買戻期間が満了している買戻特約が付いていましたので、一緒に買戻特約抹消登記のご依頼をいただいた案件がありました。

買戻特約抹消登記の手続きの流れとしては、まずは買戻特約の名義人へ連絡をし、抹消登記をしたい旨を伝えます。買戻特約の名義人は自治体や公社、ハウスメーカーなどが多いですが、買戻期間が過ぎている場合には、通常は速やかに対応いただけることが多いです。今回もそのようにして名義人へ連絡をして準備を進めたのですが、本件では買戻特約の名義人から、申出ている買戻特約以外に、共有地の買戻特約もあるので一緒に手続きの申し出をして欲しい旨の連絡がありました。要するに、当方で把握していなかった不動産があったということです。

実は、住宅ローンを組む場合に設定するような抵当権などは、「共同担保目録」といって抵当権を設定している不動産の一覧が登記簿の末尾に登記されており、抹消登記をすべき不動産が明確なのですが、買戻特約についてはそのような一覧が登記されることがないため、個別の不動産の登記簿を見ないと、どの不動産に買戻特約が登記されているのかが分かりません。そしてそもそも抵当権抹消が入り口の案件で抵当権が共有地に設定されていなかったので、私も共有地の存在が分からず、買戻特約の名義人の指摘で初めて分かったのです。

今回は買戻特約の名義人からの申し出があったため共有地について知ることが出来ましたが、仮に名義人からの申し出が無かった場合、ある不動産の買戻特約は抹消したのに他の不動産は買戻特約が残ったままになってしまう可能性がありました。買戻特約抹消登記のみをご依頼いただくことは滅多にありませんが、手続きする以上は全ての買戻特約の抹消登記を完了して置かないと、後日また同じ手続きをしないといけないため注意が必要です。

本日は以ここまでです。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

司法書士 藤原亮介